2010年7月26日

生徒の質問は教師を育てる

 同じ両親から生まれた兄弟でも性格は一人一人違うように、生徒一人一人もしかりで、いくらか似ていることはあっても全く同じということはない。
 
 授業を準備する時点で生徒からどういう質問がくるかも予想して組んでいく。経験を積んでくると、自分自身の引き出しが増えて、その質問に対する対処の仕方もいくらかは楽になってはいく。質問に対しては、出来る限り答えてあげなければならないが、その生徒の学習しているレベルをはるかに越えたハイレベルの質問に対しては、「まだ早い、それを理解するためには、これこれの項目を理解した後でないと答えても意味がない。」と答えなければならないこともある。しかしいくら経験を積んでも予想だにしないような質問は出てくる。
 何年か前に初級クラスで年配の生徒がひらがなの発声をしているとき、「お」と「む」の音をやたら強く発音する。どうしてかと聞くと、「この『お』と『む』についている点はアクセント記号でしょう?」と逆に質問してきた。「いや、そうではない。ひらがなは漢字から生まれたもので、この点は基になった漢字のある部分だ。」ということで納得してもらったが、予想だにしなかった質問だったのでびっくりした。
 振り返ってみると生徒からの質問を答えることによって得た知識は少なくない。教師の仕事は、もちろん教えることだが、その何倍も学ぶ必要がある。生徒は教師から学ぶが反対に教えていることもある。目で見えるもの、耳で聞こえるもの、そうではないものと様々だ。生徒の質問から学んだことを肥やしにして、別の生徒の様々な質問が教師を育てているとつくづく思う。

玉城正樹

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